「2つの記述は1つより良い」-『精神と自然』G•ベイトソン

精神と自然―生きた世界の認識論

精神と自然―生きた世界の認識論

前から読みたくて読んでなかった。
なぜか丸善のオカルト系特集コーナーにポツンと置いてあった。まぁかつてはニューエイジの若者にカルト的に祭り上げられてたようだから無理もない。

原著が1979年に出版されたものだが内容は全く古びていない、どころかまだ十二分に使える。

ベイトソンと言うと「ダブルバインド」理論が有名だが、それだけじゃない。そこに辿り着くまでに数多くの副産物を彼は残している。というより「ダブルバインド」理論自体が彼による壮大な「学習」理論の副産物のひとつでしかない。彼の理論の可能性はまだ十分に掘り起こされてないように感じる。

2章の「誰もが学校で習うこと」では、誰も学校では教えてくれないし習ったこともない、私たちの認識のすぐ下にあるいくつもの落とし穴を次々と指摘していく。

  • その1―科学は何も証明しない
  • その2―地図は土地そのものではなく,ものの名前は名づけられたものではない
  • その3―客観的経験は存在しない

  • その13―論理に因果は語りきれない


云々。もちろんベイトソンは一つひとつ丁寧に落とし穴の在処を示してくれている。

3章以降は1章で示唆された2つの情報の「結びつき」「重なり合い」から私たちがどんな「ボーナス」特典が得られるか(2つの目の情報から「奥行き」という情報が得られるように)、それが生物の進化にとってどんな重要性を持つかが語られている。

いちおう一般向けに書かれてるので色んな人におすすめ。
自然と進化の奥深さが味わえる1冊。