今日買った本『ソロスは警告する』

原書は今年の春に出たものだが、現在の金融危機が予言されている。

「今年中に世界経済は、大恐慌以来の巨大バブル崩壊を迎えることになるだろう」

ソロスは警告する 超バブル崩壊=悪夢のシナリオ

ソロスは警告する 超バブル崩壊=悪夢のシナリオ

前から気になってたが立ち読みしてて面白いところがあったので購入。

第一部では非常に抽象的な理論と根本概念が語られる。著者のジョージ・ソロスは元々哲学者を目指していたようで、抽象度が高く異質な語り口で経済学を扱う。ソロスは「再帰性」という理論・概念を用いて経済現象を扱おうとしているようだ。

第三章ではそのソロスの「再帰性」の理論が解説されている。もうこの章とか哲学書としか思えない。再帰性宮台真司社会学、システム論でもよく使われる概念だったので、それがどのように経済と結びつくのか気になった。


その第三章の「根本的な可謬性の原理」のところが面白い。

根本的な可謬性の原理

ポパーは、「人間は間違える可能性がある」と主張する。
だが、私は「人は誤る運命にある」という作業仮説を立てたいと思う。これを私は「根源的な可謬性の原理」と呼んでいる。根拠となるのは、次のような議論だ。

 人は現実について何がしかの洞察を得ることは出来るが、現実を理解すればするほど、理解しなければならないことは増えていく。動く標的のようなこの現実に直面して、人は獲得した知識を適用不能な領域まで拡張することで、その知識に過大な負荷をかけてしまう。その結果、現実の正しい解釈でさえも歪んだ現実認識のもととなるのだ。…

―『ソロスは警告する 超バブル崩壊=悪夢のシナリオ』p100


この部分読んで迷わずレジに向かった。哲学書としても面白く読めるかも。


(追記)現代経済学の超克について

「大変!金融工学ちゃんが息をしてないの!」とか、「詐欺の道具」だとか「メッキが剥がれて完全に権威を失墜した」なんて言う人たちもいるようだけど、外見はともかく学問の中身は今が一番成長している時期だと思う。さまざまなモデルが再検討され、あたらしい説が生まれては死ぬ。…商品乱造や顧客を言いくるめるために用いられた一時代の方便ではなく、科学として数千年先を見据えた成長を目指すなら乱世は避けて通れない道だ。

誰しもうすうす感じていることではあるが金融工学に限らず経済学は多くの「ごまかし」の上に成り立っている。それは経済学理論の不可能性を示すと同時に、新たな経済学理論の可能性を示してもいる。あと10年、20年したら現れるだろうね。現れなかったとしたら人類に絶望する。

*経済学の「ごまかし」と新たな経済学の可能性については次の本が面白い。

生きるための経済学 〈選択の自由〉からの脱却 (NHKブックス)

生きるための経済学 〈選択の自由〉からの脱却 (NHKブックス)

現在の経済学が物理法則の無視から成り立っており、それは死んだ経済学、「ネクロ経済学」だと喝破している。新たな経済学を考える上で参考になるかも。