Perfumeのようにブレイクするための条件

 久々にPerfumeについて。最近話題になった次の記事の件。

 音楽業界では古くから、「柳の下には5匹のドジョウが隠れている」と言い伝えられているという。一つのヒット曲が出たら、それを模倣した楽曲が必ず登場し、なぜか相応の実績を残すといった意味だ。バンドや歌手のあり方についても同様で、たとえば男性ダンスユニットが流行すれば、雨後のタケノコのように同種のユニットが登場する。それが音楽業界における伝統的なビジネススタイルだった。

 しかし、そうしたやり方が通用しないケースもある。昨年大ブレイクを果たしたPerfumeである。…


 Perfumeの魅力、そしてブレイクした理由については様々な角度からの分析がすでにある。かつてだったらテクノポップの新奇性が注目され、その特異なダンス、ライブで魅せるパフォーマンス、それとMCのギャップなどが挙げられた。フォロワーが現れ始め、テクノポップが広く定着している現在ではその魅力を音楽性よりもダンスや振り付け、ライブでのパフォーマンスに求めようとする向きが強い。


 もちろんそれらの分析は間違いではない。Perfumeの楽曲、ダンスの素晴らしさはいくら強調してもし過ぎることはない。しかし、なぜ多くのフォロワーが従来のセオリー通りにはブレイクできず、Perfumeだけが大きくブレイクできているのかを考えたとき、それらの音楽性やパフォーマンスだけではPerfumeの魅力を十分に汲み取れていないことに気づくはずだ。


 ではそのブレイクの必要条件を十分条件に変えるPerfumeの最大の魅力は何か?


 それは「物語」だ。


 夢をかなえるために広島から上京してきた3人の少女。評価をされながらも売り上げにつながらなかった長い苦難の時代…。広島、BEE-HIVE時代からのファンたちはその苦難を、Perfumeが売れることを願い、彼女たちと共に乗り越えてきている。ブレイクしてからのファンたちはその「物語」を主にYouTubeやニコ動などの動画サービスのファンが自主的にアップした動画などで追体験し、彼女たちをますます応援したくなってしまうのだ。


 楽曲の表面的な印象からPerfumeの匿名性がよく指摘されたが、このPerfumeとファンが時間をかけて築き上げてきた「物語」という点から見るとPerfumeは非常に強い固有性をまとったアイドル、ないしアーティストであると考えられる。このなにものにも変えられない「物語」こそが彼女たち3人をPerfumeたらしめているのである。


 これは別段、新しい現象というわけでもない。かつてモーニング娘。を輩出したASAYANがオーディションを通じた物語、ドラマを演出したときにも利用していた古くからある手法だ。
 新しい点があるとすれば、Perfumeの場合は、それがテレビなどの大きなメディアによってではなく、草の根のファンたちのネット上での活動によって少しずつ築き上げられてきたことだろうか。トップダウン式にメディアから物語が与えられるのではなく、ボトムアップ式にファンたちが物語を築き上げてきたことが物語のリアリティを強めている。『道夏大陸』はその輝ける結晶の1つといえる。



 表面だけをなぞったようなコピーなどオーディエンスは求めていない。そんなコピーを聴くぐらいならニコニコ動画に続々と新曲がアップされる初音ミク巡音ルカを聴いてた方がよい。業界関係者は上の『道夏大陸』を100回見てから出直してこよう。



*関連

 今回の記事はPerfumeファンを著書でまで公言している行動経済学者の小幡績氏のこの記事に触発されてのもの。ブクマでは「きもいw」「信者w」とか言われてるがホントにPerfumeはファンも素晴らしいんですよ(笑)。対バンでほとんど別ジャンルのアーティストとライブしてたときもPerfumeのファンは音楽が良ければちゃんとノッてたし、マナーもよかった。Perfumeのファンは本当に音楽が好きな人が集まってるんだなーと感じた次第。
 信者と呼ばれても結構!『道夏大陸』はいわば聖書とか経典。ニコ動、YouTubeは教会とか寺院か。

ちなみに小幡さんのPerfume分析についてはこちらにある動画が面白い。
http://www.ntv.co.jp/news/130902.html

先日公開されたばかりの新しいpinoのCM。60秒ver.
フライトアテンダントの衣装。越境する彼女たちにふさわしい。